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「労働政治」 [評論]

久米郁男著「労働政治」(中公新書)読了.労働組合に関してアクセスしやすい書物が非常に限られている中で,非常に勉強になる一冊だった.一方,12年前の出版という「古さ」もあって,著者の個人的主張に関しては素直に首肯しかねる部分があった.以下素人の身勝手な感想を書く.


労働政治ー戦後政治のなかの労働組合 (中公新書 (1797))

労働政治ー戦後政治のなかの労働組合 (中公新書 (1797))

  • 作者: 久米 郁男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2005/05/26
  • メディア: 新書


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「保守主義とは何か」 [評論]

以下は宇野重規「保守主義とは何か」(中公新書)を読んでの読書感想文.

保守主義とは何か - 反フランス革命から現代日本まで (中公新書)

保守主義とは何か - 反フランス革命から現代日本まで (中公新書)

  • 作者: 宇野 重規
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/06/21
  • メディア: 新書


保守主義とは何か,これはつとめて現代的な話題である.「保守」という言葉の意味する内容は話者や場面,コンテクストに依存して多岐にわたって発散している状況の中で,保守主義の源流と現代における諸相を「保守主義の本流」へのまなざしという観点から切り取った書物である.簡潔に論点が整理されておりとても読みやすく,全体的には良書であるように思う.

この本の中で,著者は保守主義の源流は18世紀イギリスのエドマンド・バークにあるとし,バークの思想を基準として保守主義を
(1) 具体的な制度や慣習を保守し
(2) そのような制度や慣習が歴史の中で培われてきたことを重視し
(3) 自由を維持することを大切にし
(4) 民主化を前提にしつつ,秩序ある漸進的改革を目指す
ものとして「再定義」しようと試みる.

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天皇の「お気持ち」を空想する [評論]

天皇が退位の意向であると突然に報道されてからしばらく時が経った.表向きは,高齢のために公務の負担が重く感じられるようになったからだと言われる.それに対して,復古的思想の右翼を中心に,「現在の制度には『摂政』があるのだから,それで天皇陛下の負担を軽減できるはず」というような発言も聞かれた.しかしこれは大変失敬な話で,天皇が現在の皇室典範に摂政の制度があることを知らないはずがない.それでもなお,あえて「退位」の意向をにじませることには,それ自体に意味があるはずだと考えるのが妥当ではないだろうか.

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大衆の反逆 [評論]

有名すぎる大衆の反逆を読む.20世紀初頭に突如として現れた「大衆」についてのオルテガ=イ=ガセットによる評論である.

オルテガはこの中でいくつもの示唆に富んだ洞察を与えている.大衆はあるがままの生を無為に再生産する,大衆は自らの安穏を支えている科学的社会的な技術の難しさを理解せず,尊重しようともしない.これらの技術は太古の昔から自然と存在しているかのように考え,まるで空気を吸うように自らの凡庸な人生を生きる権利を主張する.大衆はその権力を振るう際は必ず暴力に訴える,などなど.

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選挙結果を見て [評論]

ある程度予想された事とはいえ,僕個人の考え方からすればまたひとつ状況を困難にする要因が増えたと感じる.絶望的である.この十数年間の自民党政権の無策ぶりが経済の立ち直りを遅らせ,政府の財政を悪化させ,さらに新自由主義的政策が比較的所得の少ない国民を疲弊させたのが現在の日本の抱えている三重苦なわけで,それらへの対策には一瞬の猶予もない.ただでさえ政権慣れしていない民主党でぐだぐだしていたのに,衆参逆転となれば民主党は自らが実施したい政策に関わる法案は全く通せないのだから,民主党政権は衆議院選挙から10ヶ月もしないうちにレームダック化してしまった訳である.かといって,衆議院では数的優位に立っているから政権を明け渡す訳もないので,この先3年間はこの参議院選挙で民主党がそれなりの議席を確保したと仮定した場合に比べてより多くの政治的空白を生じてしまったと考えるのが妥当だろう.

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育てること [評論]

あれよあれよという間に,総理大臣が辞めると言い出してしまった.支持率の低さ,不支持率の高さを考えると致し方ないようにも思う.なにしろ,就任時の支持率・不支持率とくらべると両者がちょうど逆転したような格好になってしまったのだから.

しかし,人々はなぜ鳩山を支持しない,不支持だとするのだろうか?その原因は,外部的に観察すれば,明らかに基地問題にまつわるさまざまなグダグダにあるだろうと推測するのはたやすい.しかし,問題はその点にあるのではない.基地問題でぐだぐだになったからといってなぜ不支持になるのかという事である.

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幻想の家族 [評論]

選択的夫婦別姓を推進する民主党が政権を取ってにわかに日本における法的夫婦別氏の可能性が増してきたといわれる。もちろん、これを法案として政府が国会に提出できるかどうかもまだ不透明ではある。これに関してNHKが放送した特集番組を見た。知識として知っているつもりではあったが、この選択的夫婦別姓に反対する人々の訴える理屈に、改めて社会の病理をみたような気持ちがする。

曰く、夫婦別姓を許してしまえば日本が伝統的に立脚してきた夫婦同姓による家族の一体感が失われ、家族崩壊を招くというのである。申し訳ないが、ここには少なくとも3つの誤解と誤謬がある。

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ひきこもり・隠遁・亡命 [評論]

東京に戻ってきてからそろそろ半年経とうかという今日この頃。決められた用事がなければ外出せず、一日家にいる日も多く、隠遁者のような生活になってきている。現代用語では「ひきこもり」というのだろうか。しかし、社会との接点を断たれあるいは自ら断って生きている人間をひきこもりと称するならば、古来より人里離れた場所に庵や修行場を自らもうけてくらした隠遁者たちはなべてひきこもりということになるのだろう。

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絶望のようなもの [評論]

ちまたでいまよく聞かれる、あるいは、あまり愉快ではない風に流行している「仕分け」だが、僕個人もこの問題に割と近い関係にある。行政刷新会議のシワケでは、国の文教予算をことごとく減額または廃止する決定が下されたのは、スーパーコンピュータを筆頭としてそれなりに新聞紙面をにぎわしている訳だが、僕の目下の給料の出所のグローバルCOEプログラムも3割程度削減と判定されたからである。昨日、本郷キャンパスでこの決定に抗議する記者会見とやらがあり、場を盛り上げるためとでも言うのだろか、GCOEにお世話になってるものとしてはとりあえずみておこうかということでいってみた。その結果、早く言ってしまえば全くの絶望のようなものを心に抱いてかえることになったのだけれど。記者会見とは言いながら、新聞各社はじめマスコミも「もうこの間ノーベル賞の学者が出てきてやったじゃない」というかんじで、あつくなっているのは大学関係者ばかりだという感じがした。

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グローバリゼーションは何をもたらすのかな [評論]

むかしNHKの番組で映像の世紀というのがあった。1995年〜96年の番組なので、もう13年も前の番組で、これが最初に放送されたときは僕はまだ高校生だったということになる。しかし、当時この番組を見て酷く引きつけられたことは今でも記憶している。

今、これら20世紀前半の映像を見るとき、そこから伝わってくる物質的繁栄、喧騒、それから、不安、敵意。そうしたものが他人事のように思えないのである。番組制作上の脚本や音楽などの様々な効果による影響を最大限差し引いてみても、前世紀と今日の何かがパラレルに見える。世界の情勢は100年前とはこんなにも変わってしまっているのに、どうして映像の中に漲っている空気が今日の世界の空気と共鳴しているように見えるのかだろうか。

今世紀は、グローバリゼーション、あるいはグローバリズムの時代だと言われる。それはその通りだろう。そして、その「グローバリゼーション」と最も強く結びついているのは経済だと言って間違いないだろう。「グローバリゼーション」の諸現象のなかで、経済にかかわるものだけがある種突出して先行しているように見える。それは、今日を生きる我々にとってどんな意味を持っているだろう。

経済のグローバル化がどうして必要だったのか、どういう過程をたどってそうなったのかは良く知らない。それが自然な流れだといわれればそうなのかもしれないしそうでないかもしれない。では、経済のグローバル化は僕たちの世界に何をもたらしているのだろう?去る2年間の韓国ウォッチング中の僕のささやかな思考を織り交ぜながらちょっと考えてみたい。

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