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風にのって [数学]

未熟な雑感です.読まれる方は気分を害されませんよう.

数学なんてもうやりたくないと思ってた.

正確に言えば,数学なんていつ辞めたって結構,そう本気で考えていた.もう何年も.数学なんてやってたって憂鬱になったり不眠になったり,楽しいことなんてぜんぜんないし,ストレスを避けるには数学を遠ざけるしかないと.第一,僕の人生にとって数学よりも大事なものはいくらでもある.より正確に言えば,数学のために犠牲にできないものがたくさんある.極端な話,その日の食べ物にさえ困らなければ別に数学の研究にこだわって云々する必要はまったくないのだと.自分の置かれている立場上,そう公に発言することは政治的に問題があるだろうから黙っていたけど,明示的になり暗黙裡になり,僕がそう考えていることを知っている人は多かったはずだと思う.

音楽の影響も大きかった.音楽のこともたくさん考えたし,実際にたくさん活動もした.やればやっただけ上手になる感覚が楽しかったのもあるが,音楽をしたり,音楽のことを考えればすべてが太陽にあたためられ肯定されたように感じたし,なによりも音楽それ自体が力をくれたので,音楽は僕の人生にとって欠かすことのできないものだと確信した.それに比べて数学なんて.

でも,4月からの行き先が決まって,「数学なんて」とはもはやいっていられない状況になった.この1年の間に目の前にぶら下がったいろんな課題がどんどん折り重なってきてもいた.数学を辞めてしまうという選択肢が向こう数年間,実際問題として現実的でないとなった以上は,職業として安定的に数学に取り組むことを考えなければならない.

そんなふうに考えているうちに,ここ数日,僕は数学そのものがイヤになったのではないのではないかと思い始めた.必要に迫られているからなのかもしれないが,やればやったでそれなりに夢中になれる.

もしかして僕がイヤになってしまっていたのは,数学と僕との間の関係やそれをイヤというほど規定してくる環境によるものではないかと.考えてみれば,数学だって5年前よりはちょっとはできるようになったといえないこともないかもしれないし,第一,音楽がどんどんうまくなるとはいったって,絶対的な基準から見ればまったくのド素人に過ぎない.もし音楽を職業にしていたら,音楽なんてもうやりたくない,となっていたに違いないのだ.

どうせやるなら,それが職業だから,義務だからという方向の射影でとらえるのではなくて,数学それ自身をやる一つ一つの過程にちょっとでも喜びを見出していければいい.ちょうど,楽器の練習をしていて,どうしても弾けないところの部分練習を何十回もやった後で何とか弾けるようになった時に感じる喜びのように.ささやかな喜びではあっても.自分ができないところにフォーカスするのではなく,自分がちょっとでもできるようになったところを見出していきたい.そういう考え方は,たとえば論文の本数に結びつかないかもしれない.でも,そうであっても,もし数学を今までのように遠ざけていれば論文なんてできるわけないのだから,どちらがより良い考え方かは明白だ.

人生の巡り会わせというものは何かの必然であるかのようにやってくる.新しい出来事,新しい人物との出会い,新しい環境,すべてが風にのって,そうでなくてはならないという時宜にやってくる.そんなふうに感じる.


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